第11章 来たる日のためのエチュード【邁進〜底辺】
「乗り換えをミスってもし会場に辿り着けなかったら、俺は何しでかすか分からんぞ。ついて来い、垂水、真依!」
「もうっ! 勝手な人!」
「そう言うなよ、マイマイ。コイツ、マジでやるから」
垂水と真依が立ち去る東堂を追いかける。そして去り際、こちらを振り返った。
「アンタたち、交流会はこんなもんじゃ済まないわよ」
「詞織ちゃん、また会える日が楽しみだね」
「何 勝った感出してんだ! ゴラァ‼」
「わたしは楽しみじゃない」
短く返す詞織の隣で、今にも掴みかかりそうな釘崎を真希が「やめとけ、バカ」と長い棒で小突く。
「ここじゃ、勝っても負けても貧乏クジだ。交流会でボコボコにすんぞ」
「しゃけ」
真剣な表情の真希に狗巻も続いた。
そこへ、釘崎がやや躊躇いがちに口を開く。
「……ねぇ、真希さん。さっき、あの女が言ってた話、本当なの? 呪力がないって」
あの女――禪院 真希の双子の妹、真依のことだ。
釘崎の問いに、真希は一切の逡巡なく「本当だよ」と答える。
「一卵性の双子は忌み児。呪術界ではよくある話。何かしらの障害を抱えて生まれることが多いから。わたしも詩音と一緒に生まれた。詩音は普通よりも呪力が多く、わたしは極端に少なかった」
今、普通以上に呪力を扱えるのは、詩音が取り憑いているからだ。本来の詞織の呪力は、一般的な呪術師の平均以下である。
真依も呪力が乏しいと聞いているし、真希に至っては呪力がなく、眼鏡で矯正しなければ呪霊を視認することすらできない。