夢幻泡影【呪術廻戦/伏黒 恵オチ】アンケート開催中
第11章 来たる日のためのエチュード【邁進〜底辺】
「……別に、好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません。そして、辿り着いた先にいたのがコイツです」
振り返った先で、詞織の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。やがて、ボンッと音でもなりそうな勢いで夜色の目を見開き、顔を伏せた。
「おい、詞織。大丈夫か?」
さすがに心配になって顔を覗き込むと、本当に顔が熱くなっている。
「へ、ヘーキ。ビックリした、だけ……」
「何に?」
聞き返すと、詞織はムッとした表情で「知らない!」とそっぽを向いた。
「まぁ、悪くない答えね。……っていうか。アンタたちつき合ってないんじゃなかったわけ?」
「「昨日からつき合い始めた」」
示し合わせていないのに詞織と声が揃う。
すると、グスッとすすり泣く声が聞こえた。見れば、垂水が涙を流している。
「ショック! ボクの……ボクの詞織ちゃんが……!」
「俺の詞織です」
すかさず訂正する。そこははっきりさせておかなければ。
それに、先ほどから詞織と気安く名前を呼ぶのも止めてもらいたい。
そんなことを考えていると、「やっぱりだ」と低い声が空気を震わせた。
「退屈だよ、伏黒」
東堂が悲しい表情で一筋の涙を流す――瞬間、ゾクッと背筋が凍りつくほどの殺気に、伏黒は条件反射で構える。
だが、それも遅く、気がつけば東堂に外へと投げ飛ばされていた。
* * *