第11章 来たる日のためのエチュード【邁進〜底辺】
「まぁ、悪くない答えね。……っていうか。アンタたちつき合ってないんじゃなかったわけ?」
「「昨日からつき合い始めた」」
示し合わせていないのに詞織と声が揃う。
すると、グスッとすすり泣く声が聞こえた。見れば、垂水が涙を流している。
「ショック! ボクの……ボクの詞織ちゃんが……!」
「俺の詞織です」
すかさず訂正する。そこははっきりさせておかなければ。
それに、先ほどから詞織と気安く名前を呼ぶのも止めてもらいたい。
そんなことを考えていると、「やっぱりだ」と低い声が空気を震わせた。
「退屈だよ、伏黒」
東堂が悲しい表情で一筋の涙を流す――瞬間、ゾクッと背筋が凍りつくほどの殺気に、伏黒は条件反射で構える。
だが、それも遅く、気がつけば東堂に外へと投げ飛ばされていた。
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