第11章 来たる日のためのエチュード【邁進〜底辺】
――「なるほど! 呪力を使うときは常にブチ切れてなきゃいけねぇのか! 確かに、伏黒もいつもキレ気味だったかも!」
――「違ウヨ」
そんな会話が耳の奥でしたわけでもないのに、伏黒は唐突に『何か』を感じ取った。怪訝な表情をした伏黒に、師範役をやってくれている真希が「どうした?」と尋ねてくる。
「今……とてもイラっとしました」
「あ"ぁ"?」
「いや、先輩じゃなく」
後ろでは、釘崎がパンダに投げられた。あの光景を見るのは何度目だろうか。
詞織も、狗巻から正拳を食らって組み伏せられている。肉弾戦を得意とするパンダ、呪具使いの真希に隠れてしまっているが、どうやら狗巻も格闘術は得意らしい。
真希は大きくため息を吐いて口を開く。
「交流会まで一月半。ボサボサしてんなよ。次、オマエも長いの試してみろ」
放られた長い棒を受け取り、構えた。
「……意外としっくりきますね」
伏黒の返答に、真希はニヤリと笑う。
「そうか。じゃあ、次はそれ使って掛かってこい」
クイクイッと挑発してくる真希に、伏黒は一切の躊躇なく棒を振り上げた。
* * *