第10章 雨だれのフィナーレ【呪胎戴天/雨後】
「メグがわたしに気づかせてくれた。あのとき……メグがキスしてくれて、気がついた。メグはわたしのことが好きなんだって……分かった。唇を通して、伝わった気がした」
言いながら、詞織はやんわりと伏黒の手から逃れ、唇に触れる。
「もし、それが『命の順番』なら……メグがわたしの命を一番に優先したいのは、わたしのことが好きだからなら……わたしがメグの命を一番に優先したいと思うのも、同じこと」
詞織の言葉を受けて、伏黒の身体は勝手に動いていた。目の前の少女に対する愛しさが溢れ、思わず口づける。
詞織の唇の柔らかさに、理性が溶けていった。
口づけの仕方など知らない。
どのタイミングで息継ぎをするのかとか、テクニックとか、上手いとか下手とか、全く分からない。
酸素を求めて小さく開いた口に舌をねじ込み、逃げようとする詞織の舌を捉え、自分のものと絡める。
詞織の上顎をくすぐり、舌に吸いついたり、食んだり……ただ本能のままに詞織を求めた。
時折り漏れるくぐもった息遣い、「メグ」と呼ぶ切ない声や甘い吐息にゾクゾクする。
頭の芯がジン…と痺れ、クラクラと目眩さえしそうだ。
互いに呼吸が苦しくなり、肺の中の酸素がなくなった頃、どちらからともなく離れ、大きく息を吐いた。
それでも詞織のことは離したくなくて、ギュッと抱きしめる。
「……かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」
詞織の影響で、伏黒も多少は和歌の知識がある。
その中で、自分の心を反映した和歌を耳元で囁くと、詞織は顔を真っ赤にして息を呑んだ。