第8章 トラジェディの幕開け【呪胎戴天】
「― ―【声が嗄れるまで歌い続ければ キミの心に触れられるかな? 涙 枯れるほど泣き続けている キミの身体を抱きしめたいよ】」
溢れる心、生まれる旋律をそのままに歌を紡ぐ。眩い光のフィールドが形成され、守るように詞織を包み込んだ。
「【残酷な真実も 優しいウソですら 受け止める力が欲しい キミがいれば "絶対"大丈夫!】」
呪霊が迫る。詞織を消し飛ばそうと、呪力の塊を放ってきた。それを、光のフィールドが受け止める。
ビリビリと衝撃が走り、余波が頬に裂傷を刻んだ。歌が途切れそうになるも、どうにか耐えた。
この喉が潰れるまで、歌い続ける!
「【突き進む光の向こう たとえ闇が迫ってきても 負けない力 この手のひら ギュッと握りしめて 命の鼓動 重ねよう】」
思い出す。伏黒の姿、困ったように頬を染める笑顔、不器用な優しさ、ぶっきらぼうで思いやりのある言葉。
頭を撫でる大きな手のひら、自分の身体をすっぽりと包み込む腕、熱のこもった眼差し。
―― 「……"絶対" 死ぬな――"絶対"に――……俺のところに帰ってこい!」
光が集まり、ピキッと形を変えると、眩い二本の聖剣が現れた。詞織は腕を振り、歌い続けたまま、聖剣へ号令を出す。
ビュンッと駆け抜けた二本の聖剣が呪霊へ迫った。