第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
「そっか。頑張ったね」
ニッコリと笑いかける乙骨の背後で、先ほどの呪霊が巨大な顎を開く。それに気づきながらも、乙骨は笑みを絶やすことなく動かなかった。
音もなく呪霊が吹き飛び、ドチャッと不気味な音を立ててビルの壁に叩きつけられる。反射的にそちらへ顔を向ける少女の視界を、乙骨は手のひらで塞いだ。
「視えてるんだっけ」
何のことか分からず首を傾げる少女の小さな肩に触れ、音の方へ背を向けさせる。
「駄目だよ、リカちゃん。やりすぎは」
乙骨の振り返った先では、呪霊が跡形もなく消し飛び、ビルの壁におびただしい量の血痕だけが残されていた。
「憂太」
「星也さん!」
【青龍】に乗って、上空から星也が地上に降りる。
「この辺りで逃げ遅れているのはその子が最後だ。呪霊はまだ山のようにいるけどね」
「そうですか」
手のひらに砂塵と霧が集まり、静かに消えた。確か、【天空】という索敵用の式神だったか。
「そろそろ時間ですよね。早くこの子を安全な場所に……」
「あぁ。【白虎】、【玄武】――【合成天将『玄虎』】」
星也が召喚した【玄虎】に優しく乗せ、乙骨は少女の頭を撫でてやる。
「ごめんね、一緒に行ってあげられなくて」
「この黒い虎が君を守ってくれる。だから 安心して。とても速いから、しっかり掴まっているんだ。怖かったら目を閉じているといい」
宙を蹴った【玄虎】を見送り、乙骨は「行きましょう」と星也を促した。
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