第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
「ねぇ、大丈夫? 何か飲む?」
『ちょう、だい……』
近くに転がっている水のペットボトルを拾い上げ、コンビニの入口から呼びかける陰へと持っていく。コンビニの敷地を跨ぐと、細長い人と同じ形をした“何か”が手を伸ばしてきていた。
さらに横から細長い“何か”と尾で繋がった深海魚のような恐ろしい化物が、鋭い歯がびっしりと並んだ口を開く。
何が起こっているのか分からず固まる少女の耳に、ドッと衝撃音が届いた。
同時に化物を見上げれば、白い制服の高校生が真上から刀を脳天へ突き立て、その衝撃でガゴッと歩道が割れる。
思わず尻もちをついて倒れた少女に気づき、白い制服の高校生が「ごめんね。びっくりした?」と優しい笑みを浮かべた。
「大丈夫? 怪我はない?」
――高専二年 特級術師 乙骨 憂太
乙骨は呪霊から飛び降り、少女へ駆け寄って視線を合わせる。
「誰かと一緒? お父さんとか、お母さんとか」
「……分かんない」
ビクビクと震えているのは現状に驚いたからか。それとも、呪霊に殺されかけたからか、見知らぬ自分を警戒しているのか。いや、全部かな。
少女はボロボロで、特に足や靴は酷い状態だ。この辺りは商業施設ばかりで、おおよそ子どもが近づくような場所ではない。
「いっぱい歩いた?」
できるだけ安心感を与えられるよう、表情や声音に気を遣って尋ねると、少女は小さく頷いた。