第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
蝋燭だけが光源の暗い廊下を歩き、乙骨は星也と障子の扉だけが並ぶ総監部の会議室の中央に立った。
「ご苦労、星也、乙骨」
障子の一つから声がかかった。
「労う気なんてないでしょう。時間が惜しいので、早く本題に入ってもらえますか」
突き放すような物言いで、星也が話を進めさせる。
「これで、僕たちがあなたたちの命令に従うと分かったはずです」
乙骨がそう言うと、先ほどとは別の障子から老人の笑い声が漏れた。
「呪霊をいくら殺したところで何の証明にもならんさ」
「オマエたちに虎杖 悠仁が殺せるのか?」
【宿儺の器】――虎杖 悠仁の死刑執行。
それが総監部より下された命令だ。
「もちろん。元より僕は、【宿儺の器】に関しては規定側だ」
「だが、神ノ原 星也。君は虎杖と親交があっただろう。手心を加えてしまうのでは?」
「そんなことはありません。これだけのことをしたんだ。殺さなければ被害が拡大する」
しかし、総監部の彼らは口々に「信用ならない」と繰り返した。
星也は乙骨が五条と海外出張に行っている間、虎杖と任務に就いていたのだったか。
ならば……。
「星也さんに任せるのが不安なら、僕がやります」
星也の言葉を遮り、乙骨は一歩前に出た。
「僕は星也さんと違って、虎杖 悠仁と面識がない。もし それでも不安だって言うなら、“縛り”でも何でも結んだらいい」
「憂太! 君にそんなことをさせるわけには……!」
乙骨の肩を掴み、星也が自分の方へ向けさせる。夜色の瞳と目が合うと、彼はしばらくこちらを見つめた。
やがて、小さく「すまない」と謝る星也の手をやんわりと解き、低い声音で続ける。
「五条先生の教え子とか関係ないですよ。彼は渋谷で狗巻くんの腕を落としました」
「その件に関しては、星也にも責を負ってもらいたいところだがな」
「それは……」
悔しそうに奥歯を噛み締め、血が出るほど握った拳を星也が震わせた。
「星也さんに責任なんてありません。悪いのは全て【両面宿儺】。なら、やることは一つでしょう」
――虎杖 悠仁は僕が殺します。