第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
――25:26 銀座
時計塔付近 コンビニエンスストア内
食べ物を手で掴み、口に入れて咀嚼する音が静寂に響く。ゴクンと口の中のものを飲み込んだ幼い少女は、満腹になりホッと息を吐き出した。
そこへ、妙な気配を感じ、少女はコンビニの入口へ視線を向ける。深い闇の中で、ソレが手を振る様子がはっきりと見えた。
『おいで……おいで……ここは、危ない……あったかイお風呂……お歌も ウタえるよ……』
おぼつかない、歪つな呼びかけ。けれど、幼い少女がそれを気にすることはなかった。
「……お母さんは……?」
少し視線を彷徨わせ、少女は一瞬 躊躇う。
学校でも、母親にも、口をすっぱくして言われていることだ。
――知らない人に声をかけられても答えてはいけない。
――ついて行ってはいけない。
それでも……母もおらず、街にも誰もいなくて、心細かった。
『お母さんも……お父さんも……お姉ちゃんも……弟も……先生モッ、イるよ』
「わたしに弟はいないよ。あと、先生もキライ」
『わたしに弟はイナイよ……あと、先生はキライ』
様子がおかしい。具合でも悪いのだろうか。