第7章 ジョコーソに更ける夜
『詞織はね、忌子として牢獄に閉じ込められている間、ずっとあたしに寄り添ってくれていたわ。泣いて泣いて、泣き暮らすあたしをずっと抱きしめてくれていた。「独りじゃない」、「ずっと傍にいる」、「誰もわたしたちを愛さなくても」、「わたしは詩音を愛してる」……』
うっとりと、当時の温もりを思い出したように、己の身体を抱きしめる詩音。
詞織らしいな、と心のどこかで思っている自分がいた。
『あたしと詞織の仲を引き裂くヤツらは、みんなみんな苦しめばいい。詞織を殺そうとするヤツらは、死んでしまえばいい。詞織が心を砕く連中は嫌い、詞織を大切だと思うヤツはいらない、あたしには詞織がいて、詞織にはあたしがいればそれだけでいいのに……!』
ギュッと、詩音が手を握りしめる。
あぁ、コイツは本当に、詞織が大事なんだなと改めて思った。
自分を殺して、【呪い】になれるくらい。世界を呪うくらいに、詞織が大事で、愛しているのだ。かつて、自分の心を救った片割れを。
『「――そろそろ、戻って」』
カクンッと、糸の切れた人形のように少女から力が抜け、傾ぐ小さな身体を伏黒は受け止めた。