第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
「殺すなよ。伝達役(メッセンジャー)は必要だ」
「全員 生かす理由になるか?」
苛立ちを隠すことなく夏油に返しながら、裏梅は【穿血】によって傷つけられた手を【反転術式】で再生する。
「この程度の氷……!」
――【赤鱗躍動】!
体温を上昇させる脹相に氷がジュゥゥ…と音を立てるが、そこへ裏梅が指先を向けた。
「どの程度だ?」
バキッと脹相を捕らえていた氷が砕ける。虎杖が割って入り、蹴りで砕いたのだ。宿儺関連か、虎杖の氷結が甘かったため抜け出すことができた。
「誰の肉体(からだ)だと……!」
憎悪すらこもる裏梅の視線を無視し、虎杖は脹相を軽く振り返る。
「味方でいいんだよな⁉︎」
「違う!」
話の流れからてっきり味方だと思っていた虎杖は、「あぁ⁉︎」と語気を荒げた。
「俺はお兄ちゃんだ」
「真面目にやってくんねぇかな‼︎」
「とりあえず、一回『お兄ちゃん』と呼んでみてくれないか?」
状況を考えろと怒鳴りつける虎杖の視線の先で、京都校の桃が上空から急降下する。
「【付喪操術『鎌異断(かまいたち)』】‼︎」
地面スレスレまで降りてきた桃が大きく旋回して箒を振り上げた。ザンッと放たれた風の刃が夏油と裏梅を襲う。
だが、裏梅はそれを片手で振り払った。
「クソッ! 素手で払うとかヘコむんだけど!」
そう悪態を吐いた桃が「虎杖くん!」と呼びかける。
「今 動けるのはあたしたちだけ! 歌姫先生の準備ができるまで時間を稼ぐよ‼︎」
再び、場の空気が凍りついた。