第59章 終わらないドミナント【渋谷事変/堅白】
「加茂 憲倫も数ある名の一つにすぎない。好きに呼びなよ」
「よくも……」
声が怒りに震えた。脳が焼ききれそうだった。
脹相は衝動のままに駆け出す。
「よくも俺に! 虎杖を! 弟を! 殺させようとしたな‼」
そこへ、白髪頭をおかっぱにした着物姿の中性的な人物――裏梅が間に割って入ってきた。
「引っ込め、三下。これ以上 私を待たせるな」
「退け! 俺はお兄ちゃんだぞ‼」
血の繋がった弟たちの異変は、術式の影響でどんなに遠くにいようと感じ取れる。
『死』――それは生物にとって、最期にして最大の異変。
脹相はあのとき眼前で、虎杖 悠仁の『死』を強烈に感じ取ってしまった。
つまり、虎杖 悠仁も血の繋がった弟!
加茂 憲倫が身体を転々として生き永らえているのなら、何もあり得ない話ではない。
――ならば俺は、全力でお兄ちゃんを遂行する‼
脹相は両手を揃えて構え、【百斂】を形成し、全力で圧縮する。
「【赤血操術】⁉ なんて圧力だ‼」
加茂が驚きに目を剥いた。
「【穿血】‼」
ギュンッと真っ直ぐに放たれた【穿血】が裏梅に伸びる。
「速い! これが【穿血】!」
両手を翳して受け止めた裏梅へ、脹相は腕を大きく振り、軌道を変えて夏油の姿をした加茂 憲倫を狙った。ひらりと躱した地面が鋭く斬り裂かれる。
脹相はグッと開いた拳を握り、地面に付着した己の血液を操作する。それを合図にゴッと地面が揺れ、夏油の体勢が崩れた。
その隙を逃すことなく脹相は夏油に肉薄する。拳を振るい、蹴りを放つも全て受け止められてしまう。