第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
「狙撃銃か。いいね。私も術師相手であれば通常兵器は積極的に取り入れるべきだと思うよ」
夏油は【ノコギリザメ】の先端の吻(ふん)を躱して尾を掴むと、自分と真依の放った銃弾の間に翳す。
「チッ」
「アイツ、ボクの【ノコギリザメ】を盾に……!」
【ノコギリザメ】のボディが真依の銃弾を弾くのを見て、垂水が術式を解いた。
「【シン・陰流――……】」
三輪 霞が夏油の背後を取り、刀を構える。
三輪は中学で師範と出会い、刀どころか木刀も竹刀も握ったことがないにも関わらず、呪術師になることを選んだ。
実家は貧乏で、自分以外にも弟が二人いる。
ひたすら刀を振るった。母の負担になりたくなかったから。
ひたすら刀を振るった。死にたくなかったから。
――乗せる。今までの全てとこれからの未来を!
もう二度と、刀を振るえなくなっても!
「――【抜刀】‼」
その切っ先を掴み、夏油はバギンッとへし折った。
「【極ノ番――『うずまき』】」
「待て!」
虎杖の叫びも虚しく、複数の呪霊が絡み合うように混ざり合い、渦を巻いて一つに形成される。そして、不穏な叫び声をあげ、超高密度の呪力が三輪を起点に夏油の前方へ向けて放たれた。
轟音を立てて地面は割れ、砕けた砂石と共に砂塵が巻き上がる。