第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
「【呪霊操術 極ノ番『うずまき』】――取り込んだ呪霊を一つにまとめ、超高密度の呪力を相手へぶつける」
そこまで話して、夏油はクックッと笑い始める。
「……何 笑ってんだよ」
「いや、すまない。急にらしいことを始めてしまったなと思って。【うずまき】の話だったね。【うずまき】は強力だが、【呪霊操術】の強みである手数の多さを捨てることになる。だから、初めはあまりそそられなかった。ただの低級呪霊のリサイクルだと思っていたからね」
どこか他人事のような口ぶりに違和感を覚えるも、虎杖は黙って話を聞いていた。
上空――それ以外からも気配を感じる。
今ではない。今は――待つ。
「でも違った。その真価は準一級以上の呪霊を【うずまき】に使用したときに起こる“術式の抽出だ”」
おもむろに口を開いて黒い球体を呑み込む夏油に、虎杖は瞠目した。やがて ゴクリと嚥下した彼がゆっくりと瞼を開く。
「馬鹿だな。君が感じた気配に、私が気づかないと思ったのかい?」
夏油が上空を仰いだ。そこにいたのは、ランタンをひっかけた箒に乗る京都校の学生――西宮 桃。
それを合図に、彼方から無数の矢が放たれた。矢を避けきった夏油へ、【ノコギリザメ】と一緒に銃弾が挟み撃ちするように襲いかかる。
虎杖がそちらを向けば、桃と同じ京都校の加茂 憲紀と禪院 真依、垂水 清貴の姿があった。