第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
「……シン陰か……よかったよ。少しは蘊蓄(うんちく)がある奴が来てくれて」
呪力が放たれた場所は地面が深く抉れ、跡形もなく消し飛んでいた。
「日下部さん!」
「先生が前に出てきちゃ意味ないでしょ!」
「仕方ねーでしょ!」
自分たちを庇うように刀を構えた日下部 篤也へ呼びかける三輪の隣で、桃と反射的に生徒を守るべく飛び出した庵 歌姫が言い合いをしている。
そこへ、ふわふわの毛並みが虎杖の身体を支えた。
「虎杖……で、いいんだよな?」
「パンダ先輩! と、京都校の糸目先輩とチャラ男先輩‼」
「オイ、加茂っち。糸目だってさ!」
「オマエもチャラ男だろ」
加茂 憲紀と垂水 清貴、と改めて自己紹介がされる。ちなみにパンダは普段とは違い、ゴリラのようにムキムキだった。
「よかった、戻ったんだな」
ホッとしたパンダの声音に、渋谷ストリーム前での出来事を思い出し、申し訳なさが募る。
「あの男が五条 悟を……【獄門彊】を持っているのか?」
加茂の問いに「らしいぜ」とパンダが頷いた。
「あんな公害、持ち歩いて何が楽しいんだか」
「よっぽど好きなんでしょ。閉じ込めて持ち歩きたいタイプ。歪んでるねぇ」
「オマエが言うな、垂水」
垂水と加茂が軽口を応酬し合い、再び夏油へ視線を戻す。
「……冗談はさて置き、何者だ?」
「皮は夏油 傑。中身は知らねぇよ」
「へぇ」
加茂に対してもたらされたパンダの答えに、垂水が不敵に口角を上げた。