第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
「ンなもん!」
触手から逃れようとするもキツく絡みつき、先ほどの巨大な穴へと落とされる。
「去年の百鬼夜行――新宿と京都に戦力を分散させなければ、勝っていたのは乙骨と星也ではなく“彼”だっただろう」
――君には関係のない話だったかな……?
再び視線を向けられた虎杖の服を引き裂かれ、身体は血だらけで膝をついていた。
しかし、その瞳から闘志が消えることはなく、重たい息を吐き出しながら夏油を睨みつける。
「……返せ!」
「我ながらさすがと言うべきか。【宿儺の器】、タフだね」
笑う夏油の背後から真人が掴みかかった。それをひらりと夏油は躱した。
『知ってたさ。だって俺は、オマエら人間から生まれたんだから!』
それを最期に、真人の身体がズルルッと歪み、手のひらサイズの黒い球体へ姿が変わる。その球体を手にし、夏油はこちらを見た。
「続けようか。これからの世界の話を」
手の中で真人だった黒い球体を弄びながら、夏油が続ける。
「【極ノ番(ごくのばん)】というものを知っているかい? 『領域』を除いたそれぞれの術式の奥義のようなものだ」
その話で真っ先に思い出したのは、八十八橋で戦った兄の方の呪霊だ。
【極ノ番『翅王(しおう)』】という背中から翅を生やす術式を使っていた。
そして、自分が直接 見たわけではないが、宿儺が戦った火山頭の呪霊も【極ノ番『隕』】という隕石のような巨大な火球を落とした。