第7章 ジョコーソに更ける夜
『穢らわしい手で詞織に触れないでくれるかしら?』
「呪霊……それもこの呪力、特級……!」
釘崎が金槌を手に取り、緊張した声音で言葉を絞り出す。
『あらあら、そんなに怯えなくても大丈夫よ。あたしはあなたたちのことが憎くて憎くてたまらないけれど、この子の許しなく誰かを呪い殺すほどの力を振るうことはできないもの』
クスクス、クスクス。あくまで詞織――否、詩音はただ艶然と微笑を浮かべていた。
「憎いって……あたしたちがあんたに何をしたってわけ?」
毅然と、けれど金槌を手放さない状態で、釘崎は果敢に尋ねる。
『何を? 詞織に関わっている時点で罪だわ。詞織と同じ空気を吸い、姿を見て、言葉を交わし、心を砕かれ、友人として認識されている。これからの時間を共に過ごすことができるなんて、羨ましい……!』
ブワッと、背筋が凍るほどの冷たい呪力が空気を塗り替え、その場を支配した。
妬ましい、疎ましい、苦しい、憎い……!
詩音が一つ口にするたびに、空気が重たく歪んでいく。
伏黒は固唾を呑み、瞬きすら油断できない状況で警戒する中、詩音は胸を押さえて俯き、叫んだ。