第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
「残念だったな。俺の術式は、もう死んでいる」
しまった――‼
――【黒閃】‼
最大呪力を乗せた虎杖の【黒閃】が真人を直撃する。大きく吹き飛び、崖の壁に打ちつけられた。
【遍殺即位体】を維持できず人間態に戻った真人は、そのまま岸壁をよじ登り、どうにか虎杖から距離を取るべく地面を這う。
『ハ――ッ! ハ――ッ! ハ――ッ! まだ……まだだ!』
『オェッ!』と吐き出すが、胃液以外に出てこない。改造人間のストックが切れたのだ。
「認めるよ、真人。俺は、オマエだ」
眼前に立った虎杖が真人を見下ろす。その瞳からは何の感情も窺えない。
「俺はオマエを否定したかった。オマエの言ったことなんて知らねぇよって」
今は違う、と虎杖が続ける。
「ただオマエを殺す。また新しい【呪い】として生まれたら、ソイツも殺す。名前を変えても、姿を変えても、何度でも殺す」
――もう、意味も理由もいらない。
「この行いに意味が生まれるのは、俺が死んで、何百年も経った後なのかもしれない。きっと俺は大きな……何かの歯車の一つに過ぎないんだと思う。錆びつくまで【呪い】を殺し続ける。それが この戦いでの俺の役割なんだ」
ゾワッと薄ら寒い妙な気配を感じた。
今まで戦ってきた虎杖 悠仁とは違う。
さっきまで痛めつけていた虎杖 悠仁とは違う。
彼が得体の知れない“何か”のように感じられ、真人は虎杖から逃げ出した。その背中を虎杖が追いかけてくる。
そこへ、真人の袈裟姿の男が真人の前を塞いだ。
* * *