第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
今までの手段としての変形じゃない……何かが違う?
『ハッピーバースデイってヤツさ、虎杖』
人の形ではない、呪霊に近い容姿へと変貌を遂げた真人を、虎杖は注意深く観察した。
『【黒閃】を経て理解したんだ。俺の本当の……剥き出しの魂を!』
「驚いたよ。オマエが自分探しをするタイプだったとはな」
そんな虎杖の皮肉にも、真人は『そうだな』と笑いながら受け流す。
『でも、仕上げはこれからだ。オマエを殺して、俺は初めてこの世に生まれ堕ちる』
真人が腕を振った。たったそれだけで、地面が真人を中心に円形に抉れる。それを転がりながら躱して身を起こし、虎杖は真人へ蹴りを放った。
だが、真人は身を捻り、後頭部から漏れる呪力に刻まれる。
痛みをねじ伏せ、真人の拳を受け止め、懐に己の拳を叩き込み、虎杖は目を瞠った。
固い――生身で……⁉
脹相を最後に殴ったときの固さ以上に‼
受け止めた虎杖の腕を振り払われ、虎杖は斬りつけられた。そちらを向けば、真人の肘からブレードが生えている。
無数の斬撃をいなしながら、虎杖も重く拳を腹に決めた。だが、全く効いていない。今まで通っていた攻撃が通らない。
――『【黒閃】を経て理解したんだ。俺の本当の……剥き出しの魂を!』
そういうことか。コイツはもう呪霊として、変身前とは別次元の存在に成ったのだ。
やがて、真人が虎杖の顔面を掴み、地面に叩きつける。その衝撃でドゴォッと地面が割れ、そのまま生まれた崖下へと落ち、バシャンッと水飛沫が跳ねる。
コイツを倒すには【黒閃】を――それも、最大呪力出力の【黒閃】をブツけるしかない‼
【黒閃】を狙って出せる術師は存在しない。
できるのか、自分に。できなきゃ死ぬのは自分だ。
膝がガクガクと痙攣して足を上手く動かせない。
同時に、真人のブレードがボロッと崩れ、真人は血を吐く。一瞬とはいえ、【領域展開】直後に食らった【黒閃】を食らった影響だろう。
虎杖は痙攣する膝をガンガンッと殴りつけて立ち上がり、感覚を研ぎ澄ませる。
『クックッ。お互い元気いっぱいだな』
それは一瞬だった。
迸る虎杖の呪力が水を巻き上げる。虎杖は真人と拳を打ちつけ合い、ひたすら契機を待った。
* * *