第58章 アジタートに昇華する【渋谷事変】
領域が解除される。東堂の左手の肉が不自然にボコボコッと脈を打った。真人の【領域展開 自閉円頓裹】の影響だ。
「東堂!」
こちらへ向かっていた虎杖が東堂を振り返った。その隙を逃すことなく真人は虎杖を殴りつける。
その中で、東堂が真人の術式に侵された左手を手首から手刀で切り落とした――瞬間、切り離された東堂の左手がボンンッと弾けて消滅する。
『なんだよ。せっかくオシャレにしてやったのに』
痛みに蹲る虎杖を放って駆け出した真人は東堂の懐に入り、ニヤリと嗤った。
【領域展開】後、肉体に刻まれた術式は一時的に焼き切れ、使用困難となる。真人はそのことを、里桜高校での遁走から理解していた。
――【黒閃】‼
「かは……っ! はぁ……はぁ……っ!」
真人の【黒閃】により身体が吹き飛ぶも、東堂は血を吐きながら踏みとどまった。山勘で腹に全呪力を集中させ、ダメージを最小限に抑えたのだ。
しかし、真人の術式は回復している。そして、東堂が術式を発動するために必要な手は失われた。
――今度こそ、【無為転変】で確実に殺す!
そのとき――ブチッと東堂のネックレスの紐が千切れ、チンッと地面に落ちる。落ちたペンダントが開いた。
何となく視線が吸い寄せられる。そして、真人はそこに収められた写真を見た――否、“見てしまった”。
『は……? え……?』
写真――見知らぬ女と……虎杖?
え、なんで?
コイツ、なんで そんな写真を身につけているんだ?
己の理解の範疇を超えたモノに頭の中が混乱する。
思考が、鈍る。
『なんで?』という疑問の嵐から抜け出せない。
まるで、誰かに脳をフルボッコにされているような混乱の渦。