第57章 導く想いのコン・センティメント【渋谷事変】
――「七海は必ず助ける」
そうだ。灰原はそう言ってこの場を任せてくれた。今はその言葉を信じよう。
走って行く燕尾服の少年の背中が見えなくなって、虎杖は立ち上がった。そこでは、東堂が真人と激戦を繰り広げている。
自分が先ほどの燕尾服の少年の処置を受け、再び立ち上がる時間を稼いでくれていたのだろう。
東堂は術式【不義遊戯】と得意の体術で真人を翻弄していた。
――パンッ!
手を鳴らす音と共に、虎杖は東堂がいた位置と入れ替わる。目を見開く真人の前で、虎杖は拳に呪力を溜めた。
――「……悠仁。君はもう、呪術師なんだ」
あの人の強さと弱さに憧れた。
たくさんの人を守る強さと、守れない弱さ。
命の重さに押し潰されそうになる弱さと、それでも逃げない強さ。
せっかく認めてくれたのに、自分は逃げ出そうとした。
罪すらも逃げる言い訳にした。
驚いたまま固まる真人へ、虎杖は拳を叩き込む。
――【黒閃】‼
ビリビリと空気が震え、黒い火花が勢いよく爆ぜた。
――星也さん。俺、ちゃんと苦しむよ。
傷ついた人の分も、死なせてしまった命の分も。
星也さんが背負っているように、俺も俺の罪を背負う。
そして――信じる。
七海を助けようとする灰原と星良を。
釘崎を助けようとする順平たちを。
皆の言葉も、希望も、諦めない気持ちも――ちゃんと信じる。
『死に体(たい)が』
【黒閃】で潰れた腕を真人が修復し、ニヤリと嗤った。それに動じることなく、虎杖は東堂の隣に立つ。
「おかえり」
「応!」
Tシャツをビリッと破る荒々しい動作とは裏腹に、優しい声音で東堂は虎杖を迎えてくれた。
* * *