第57章 導く想いのコン・センティメント【渋谷事変】
「ブラザーだな。ここは任せる。処置が終わったら合流しろ」
「はぁ⁉ ちょぉっ⁉ 任せるって……っ!」
止める間もなく、東堂は戦闘音のする方へ走って行く。まぁ、自分程度が東堂を止めることなどできはずもないが……。
「あぁ、もう! ホンマに話 聞かん人やな……!」
処置を施すなら先に少女の方か。手を伸ばして触れようとすると、ピクリと少年の手が動いた。
「……釘崎さんに……触るな……何かしたら、殺す……」
スカッと持ち上げられた手が宙を切る。虚ろな目は焦点が合わず、おそらく朦朧としていて見えてもいないだろう。
「俺は呪術高専 京都校の新田 新です」
「きょう、と……?」
「そっち(東京)にいる補助監督の新田 明、知ってます? その弟です」
「新田さん……」
ガクガクと震える手が下ろされる。どうやら、姉のことを知っているようだ。過干渉気味な姉のことは苦手だが、今回は感謝しよう。
「術式 解いてもらえますか? 代わりに俺の術式 掛けるんで」
「……助かる、のか……?」
先ほどまで手負いの獣のような雰囲気だったのが、今は迷子の子どものような頼りなさで瞳を揺らしている。
「正直 望み薄やけど、何もせんよりはマシかと思います」
クラゲの式神が消えたのを確認し、新は手に呪力を纏わせ、少女の左側の顔に触れた。
「俺の術式は悪化を防ぐだけ。【反転術式】とは違うんで、治療することはできませんから、そこんとこは間違えんといてください」
そう説明して、出血する少年の傷口にもパパパッと手を当てて術式を施す。
「出血も止まるし、痛みも引いてくと思います。俺は東堂さんに呼ばれてるんで行きますけど、俺が戻ってくるまで動かんでくださいね」
……とは言ったものの、出血のしすぎで貧血を起こしているだろうから、動こうにも動けないだろうが。
「……あ、り……がと……その……ごめ……」
ずっと気を張り詰めていたのだろう。
最後まで言い切ることができないまま、少年は意識を失った。
* * *