第57章 導く想いのコン・センティメント【渋谷事変】
――23:09
都心メトロ渋谷駅
地下五階 新都心線ホーム
呆然と立ち尽くし、微動だにしない人々に、新田 新は目を見開いた。
「……この人らは――生きてますよね?」
近くにいた男の首筋に手を当てる。脈はある――が、意識はない。
あまりの光景に恐怖すら感じる。
どうやったら こんなことができるんだ?
その問いに答えることなく、一緒にここまできた東堂は周囲を見渡す。
「……どうやら、夏油 傑はすでに【獄門彊】を持ち去ったようだな」
「そんな……っ!」
絶句する新だったが、東堂がパチンッと鳴らした音で我に返った。
「切り替えろ。五条 悟を取り戻す戦いから、味方を救い、できうる限り 敵戦力を削ぐ戦いへと、今! 目的が変わったんだ。急ごう。虎杖(ブラザー)なら近くに来ているはずだ」
え、この人 兄弟がいたのか。絶対 一人っ子だと思っていた。
それから、来た道を引き返す東堂の大きな背中を追う。
やがて、道玄坂方面で蛍光灯の光を反射させる巨大なクラゲを見つけた。
「君……!」
クラゲの傍らに誰かが倒れていることに気づき、慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですか⁉」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
高専の制服――東京校の術師か。おそらく、このクラゲの式神の主人だろう。
少年の呼吸は浅い。それに、胸を貫かれているのか、出血も酷く、意識が混濁している様子だ。
だが、問題なのはもう一人の少女の方だ。こちらは完全に呼吸も脈も止まっている。
「己の術式で敵の術式の中和を試みたのか。この状態で術式を発動させ続けるとは……だが、このままでは死ぬぞ」
そこへ、戦闘音が耳に届いた。
「何や……⁉」
誰かが近くで戦っている?
少女を殺し、少年を瀕死に追いやった呪霊か呪詛師と戦っている者がいるのか?
自分の術式はサポート向き。戦闘は得意ではないのだが。