第7章 ジョコーソに更ける夜
「釘崎 野薔薇。三級呪術師。虎杖と同じ東北出身よ。盛岡まで四時間もかかるド田舎のね。呪術高専に来たのは、田舎がイヤで東京に住みたかったから! お金のことを気にせず上京するには、こうするしかなかったの」
そう言ってサイダーを一息に飲み干すと、紙コップをギュッと握り潰す。
よっぽど地元が嫌いだったのだろう。彼女の気迫に、正面に座っていた詞織は思わず身を引いた。
「え……そんなんで命懸けられンの?」
目をパチクリさせる虎杖に、釘崎はニッと口角を上げて力強い笑みを浮かべる。
「懸けられるわ。あたしがあたしであるためだもの」
ふぅん、と虎杖は何かを納得するように頷いた。
別に、呪術師になる理由なんて千差万別だ。
詞織が呪術師になったのは、それ以外に生きる方法がなかったからだ。
詞織は死ぬわけにはいかなかった。
何もせずにただ死ぬことは、自分を生かすために命を絶った詩音への冒涜だ。どうしても、生きていなければならなかった。
そのために、呪術師という道を選んだのだ。
自分が詩音に求めた道を……。