第56章 伸ばした手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
『うんうん。そっか そっか。でも、順平の言う悲しみも辛さも、絶望も――全部 虎杖から始まったことだよ』
「――違う! 違う違う! 全ッ然 違う‼」
――「大丈夫。虎杖くんは悪くないよ」
――「言わないよ。虎杖くんが背負うことじゃない」
あの言葉に嘘はない。
今までも、今も……これからだって。
「たとえオマエの言う通り 全ての始まりが虎杖くんで、そのせいで母さんが死んだんだとしても……僕を救ってくれたのだって虎杖くんだ!」
虎杖が全力で呼びかけて、ボロボロになりながらも手を伸ばしてくれた。だから 自分は変わることができた。前を向くことができたのだ。
「その事実が変わらない限り、僕は何度だってこう言える!」
――虎杖くんは悪くない‼
目元の涙を乱暴に拭い、順平はキッと真人を見据える。
「だから僕は……」
――「俺はもう、絶対に順平を“呪ったりしない”」
「僕は虎杖くんを“呪わない”――絶対にッ‼」
ギュッと拳を握り込むと、後ろで釘崎が小さく笑い、ポンッと肩を叩いてきた。
「よく言った、吉野! 上出来よ‼」
「うん。ありがとう、釘崎さん。釘崎さんが殴ってくれたおかげで目が覚めた」
パンパンッと今度は自分で頬を張って気合を入れ、警棒型呪具の先端を真人に向ける。
「オマエを祓う。でも それは、復讐のため“だけ”じゃない」
――母さんを殺したヤツに復讐がしたかった。
だが、気づいた。
きっと、心優しく大らかな母の望みではないだろう。
それでも、この気持ちは止められない。
――「いつか、母さんを殺した呪詛師を見つける。見つけてどうするか……今は分からない」
復讐する相手を目の前にして、自分がどうしたいのか分かった。自分が戦う理由は、復讐のためだけじゃないのだと。
「――僕が呪術師で、虎杖くんの友達だから。それがオマエを祓う理由だ」
そう啖呵を切ると、真人は『へぇ』と愉しそうに目を細めた。