第56章 伸ばした手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
『ばぁ』
芋虫のように改造させられた人間の口から、真人が舌を出して現れたのだ。無防備な虎杖の顔面へ拳が迫る。そのとき、『ゲコッ』と蛙の鳴き声が耳に届いた。
腰に何かが巻きつけられ、背後に引き寄せられる。虎杖の髪の先がはらはらと宙を舞った――次の瞬間、突如として【自来也】の輪郭が解け、ハラハラと音を立てて消えた。灰原の込めた呪力が切れたのだ。
『あ~ぁ。頼りになるお仲間が消えちゃったね』
真人の手の甲には剣のような形がくっついていた。殴りつけたついでに顔面を貫くつもりだったのだろう。【自来也】が助けてくれなければ危なかった。
『いやぁぁあ』
芋虫のように変形させられた改造人間が悲鳴を上げている。
「どうしてオマエは何度も……何人も! 人の命を玩(もてあそ)ぶことができるんだ……⁉」
この渋谷でも、何体、何十体、何百体と見た。改造されて、したくもない殺しをさせられる者たちを。たくさん見て、同じ数だけ殺した。
自分だけじゃない。伏黒も、詞織も……釘崎や順平たち、この渋谷にいる術師たちも同じだろう。
すると、真人は『くははっ』と笑い出した。
『指折り数えて、困り顔で殺せば満足か? 次からはそうするね』
そう言って、左手を順平の顔に似た頭部へ作り変え、口角を上げる。
『ペラッペラのオマエには、ペラッペラの答えを授けよう。虎杖 悠仁――オマエは俺だ』
「あ?」
真人が右手で順平に似せた頭部を貫くと、『うわー』と乾いた悲鳴が上がった。
『いちいちキレんなよ。たかが呪霊の戯言だろ? だがな、ソイツを認めない限り、オマエは俺に勝てないよ』
真人のその戯言に深く重く息を吐き出し、前髪をかき上げる。