第56章 伸ばした手に掴むデテルミナート【渋谷事変】
『あれ? 足りないね。もしかして逃げちゃった?』
瓦礫から立ち上がり、真人がコキコキと首や肩を回す。虎杖が腰を落として拳を構えると、後ろで『ゲコッ』と鳴く【自来也】の存在を感じた。
『さっきの呪符さぁ……アレ、順平の学校で特級が使ってたヤツだよね。ほら、順平を改造しようとしたのを止めたヤツ。なぁんか感じが似てた。あの女のだったのかな? 厄介そうだから殺しときたかったけど、残念』
知るか、そんなこと。だが、呪符などは【書字具現術】では必需品のはず。元は星良の所有だったというのは間違っていないのだろう。
「……なんで七海さんを殺そうとした?」
『そこにいたから。それ以外に理由ある? オマエだって、目の前に呪霊がいたら祓うだろ。それとおんなじ』
「じゃあ……順平を殺そうとしたのは?」
『順平? まぁ、色々 理由はあるけどさ……』
すると、ニタァと真人が歪んだ笑みを浮かべる。
『やっぱ一番は、面白そうだったから……かな?』
ブチッと頭の血管が切れた気がした。
「……何なんだ……オマエは何なんだ! 真人‼」
『デケェ声 出さなくても聞こえてるよ! 虎杖 悠仁‼』
改造人間の死体の中を駆けながら、虎杖は真人に迫る。そこへ、真人がコインを弾くように何かを飛ばしてきた。『おたすけぇぇ』とか細い声が聞こえる。小さく圧縮された改造人間。
改造人間は壁となり、頭部を鋭く鋭利に形を変えて伸びてきた。虎杖はとっさに足で急ブレーキをかけ、身を低くして躱す。さらに改造人間の頭部は、避ける虎杖を追うようにどんどん伸びてきた。
不意に死角をつかれ、攻撃を受けるべく受け身の体勢を取るが、寸前で動きが止まる。灰原の残した【自来也】が改造人間を貫いて殺したのだ。
『【多重魂――「撥体」】‼』
【多重魂】で二つ以上の魂を融合させ、【撥体】で魂を融合させることで発生した拒絶反応を利用し、魂の質量を爆発的に高め、相手に向けて放つ。
ギョリギョリ…と合わさった魂が、巨大な芋虫のように床を抉りながら、身体をうねらせて虎杖に大きな口を開いた。虎杖は寸でのところで開いた口の上下を押さえつけ、踏み止まり――目を見開く。