第7章 ジョコーソに更ける夜
「隣なのね」
部屋に入ろうとした詞織に声を掛けてきたのは、今日 合流した一年生――釘崎 野薔薇だった。
「野薔薇」
「いきなり名前呼びなわけ? それが東京流なのかしら?」
「別に。東京は関係ないと思うけど」
嫌なのだろうか? 止める気はないけど。
それよりも、同級生が隣の部屋なのは嬉しい。
きっと、虎杖の部屋を伏黒の隣に配置したように、釘崎の部屋も五条の計らいだろう。
不意に、ジッと釘崎がこちらを見てくる。
「……何?」
「あなた、表情筋が死んでるの?」
「死んでない」
手を伸ばして頬をグニグニとつねってくる釘崎に抗議をするが、止める気配なし。
「おい」
そこへ、聞き慣れた声が不機嫌そうにかけられた。
「なに詞織で遊んでんだ?」
眉を寄せて現れたのは伏黒だ。後ろには虎杖の姿もある。
「メグ」
パッと解放された隙に伏黒へ駆け寄る。
「ほっぺた、無事?」
「無事」
頬に触れる伏黒の指に、詞織はビクッと身体を震わせた。
手、冷たい。けれど、伏黒の手は優しくて好きだ。
「あの二人、つき合ってんの?」
「違うらしいぞ。幼なじみなんだって」
ふーん、と釘崎が相槌を打つ声が聞こえた。
「そーだ! 五条先生が、歓迎会? 懇親会? しろって! お菓子とかジュースとか買ってくれたんだ!」
「なにそれ? どっちも居酒屋で夕飯の焼き鳥 食べて終わったんじゃないの?」
虎杖の言っている意味が分からず、詞織は首を傾げる。
五条のオススメの店は、ビフテキも寿司もフルーツポンチも出ない、こじんまりとした居酒屋だった。
虎杖と釘崎が、ガックリと肩を落としたのは言うまでもない。