第55章 永久を願うコン・アモーレ【渋谷事変】
「真希、死んじゃダメだよ」
真希の傍らに膝をつき、星良は懸命に【反転術式】をかけた。
制服だけではない。肌には目を背けたくなるほどの酷い火傷、長かった髪も燃やされて短くなってしまっている。生きているのが不思議なくらいだ。
すぐ傍には禪院 直毘人も倒れていたが、こちらは程なく息を引き取ったのを確認した。二人の容体を見て、真希の方が助かる見込みがあると判断したのだ。
五条 悟封印の知らせは、虎杖が渋谷の街で叫んだときに星良たちも聞いていた。
あの現代最強の術師も臨場しており、どうせすぐにこの事態も収まると思っていた……けれど、その五条が封印されたとなると……。
呪力は温存する。与を通じて家入からもそう伝言をもらっている。
自分はこれからも、命を天秤にかけなければならない。今、真希と直毘人を天秤にかけたように。助ける人間と、助けない人間を……。
――「あたしは誰かの命を諦めない。最後まで足掻くって決めてます」
そう七海に偉そうに言っておいて……多数を助けるために少数を見捨てている現実。
傲慢。神様かよ、と自分でも嗤いたくなる。
「与くん、真希の容体が安定したわ。すぐに硝子さんのところに。あと……ご当主も」
遺体をこのまま放置にはできない。特に彼は御三家の当主。彼の死後の影響を考えると、遺体は持って帰る必要がある。
伏黒が巻き込まれなければいいが……それも無理だろう。伏黒は禪院の正当な血筋で、相伝の術式も持っている。本人の望む望まないに関わらず議論に名前が上がることは避けられない。
せめて神ノ原一門が権力を持っていれば話は違ったのだろう。当時は御三家に及ばずとも影響力はあった。いくらか庇うことはできたかもしれない。
まぁ、もしを断じたところで意味はないか。
星良に言われ、二体目の傀儡がやってきて、与のメカ丸2号とメカ丸3号がそれぞれ真希と直毘人を運んでいく。
それを見送っていると、「星良ちゃん!」と灰原が血相を変えて呼んできた。