第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
「オマエが気を失ったのは俺を庇ったからだ! 六月のあのときも、オマエだけのせいじゃねぇ‼︎」
「――そうだ」
二人の話に割って入り、星也は短く言った。
「これは誰か一人のせいじゃない。詞織と恵と悠仁、三人で受け止めて、向き合って、背負わないといけないことだ」
それに、宿儺と【魔虚羅】の戦いで消失した渋谷の一角と、そこで失われた命の責任は自分にもある。
自分が【魔虚羅】を倒すことができていれば、失われずに済んだ命だ。術式の相性などは言い訳にしかならない。
力が及ばなかった。それだけが敗北した理由だ。
「……いつかこんな日がくるだろうって、覚悟はしてました」
俯いて震える詞織の手を握り、伏黒はまっすぐこちらを見てきた。
詞織もきっと覚悟はしていたのだろう。それでも、覚悟するのと、現実を目の当たりにするのは違う。
「後悔してるかい?」
「「――全然」」
星也の問いに、二人は躊躇なく首を振る。
「アイツが死ぬほど後悔してたとしても、俺に後悔はありません」
「わたしも。宿儺のやったことでたくさんの人が死んだ。それでも、ユージを死なせたくない気持ちは今も変わらない」
押し潰されてしまわないか不安だったが、この二人なら大丈夫だろう。
それより、虎杖の方が心配だ。宿儺と一体になっている分、罪の意識も大きいはず。
星也は一歩踏み出し、二人をまとめて抱き寄せた。
「僕も背負うよ。宿儺を止められなかったのは僕の弱さが原因だ」
「兄さまは何も……」
「あるよ。僕にも責任が」
二人の頭を優しく撫で、名残惜しさを感じながら離れる。