第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
『やはり持っていたな。【陰陽術式】じゃ、書いた呪字を具現化できるものがあっただろう? オマエの姉が使っているものだ』
なんでそれを……と思って、虎杖を通して見ていたのだなとすぐに分かった。術式を刻んでいるから、星也でなくとも呪力を流せば発動することが可能だ。
宿儺が抜き取った札は『式』と書いてあるものだった。術師がイメージした形の式を呼ぶことができるが、式自体は簡単な命令しか遂行できない。
宿儺が呪符を発動し、伏黒の【鵺】のような大きな鳥の式を作り出す。
『来い』
「はぁっ⁉︎ ちょ……何を……⁉︎」
突然 両腕に抱きかかえられた。抵抗をするもビクともしない。
『暴れるな。取って食いはせん――“今はな”』
後ろでは、式で作られた鳥が詞織と伏黒を背中に乗せて飛び上がる。そのままSHIBUYA109を離れ、夜蛾や家入が待機している首都高速まで戻ってきていた。
「星也! 伏黒! 詞織!」
夜蛾の声が聞こえる。宿儺が去ろうとするのを、服の裾を掴んで引き止める。
「待て。悠仁は……」
『どうだろうな』
小さく鼻で嗤い、乱暴に腕を振りほどいて去って行った。
「星也、今のは虎杖……いや、宿儺か……?」
「…………」
何も言わない星也に嘆息し、夜蛾は【呪骸】を呼ぶ。