第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
『やはり……八岐大蛇に近いモノだな』
自分が食らった二度目の攻撃……一撃目の正のエネルギーから一転、呪力が篭められていた。自分の斬撃【解】も見切ってきた。どちらもあの背部の法陣が回転した後だ。
あらゆる事象への適応――やはり、この推測に間違いはないだろう。
あの少年院のときの自分では、敗れていたかもしれないな。
『……ケヒッ! クックックッ! オマエも魅せてくれたな、伏黒 恵‼』
どこまでも昂らせてくれるヤツらだ。
喉の奥でクックッと喉を鳴らして嗤うと、指先を合わせて印を結ぶ。
「――【領域展開 伏魔御廚子(ふくまみづし)】」
ガラガラと様々な生物の頭蓋骨に象られたおぞましいお堂が広がった。
宿儺の斬撃は二種類――通常の斬撃【解(カイ)】と、呪力差・強度に応じ、一太刀で対象を卸す【捌(ハチ)】。
【伏魔御廚子】は他の者の領域とは異なり、結界で空間を分断しない。結界を閉じずに生得領域を具現化することは、キャンバスを用いず 空(くう)に絵を描く行為に等しい――まさに神業。
加えて 相手に逃げ道を与えるという“縛り”により底上げされた必中効果範囲は、最大半径二〇〇メートルに及ぶ。
宿儺は星也と伏黒、“詩音”への影響を考慮し、効果範囲を半径一四〇メートルの地上のみに絞った。
必中効果範囲内の呪力を帯びたモノには【捌】、呪力のないモノには【解】が、【伏魔御廚子】が解除されるまで 絶え間なく浴びせられる。
縦横無尽に駆け抜ける無慈悲な斬撃が、あらゆる人間、物体、建造物へ容赦なく浴びせられ、塵のように粉微塵に消し去った。
斬撃を見ることも感じることもできない一般人たちは、悲鳴を上げる間もなく、自分の身に何が起こったか分からないまま命を落としていく。