第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
先ほどの刃――対 呪霊に特化した【退魔の剣】か。【反転術式】同様、正の呪力を纏っている。自分が呪霊だったならあの一撃で消し飛んでいただろう。
星也の【陰陽術式】も呪霊に特化した術式だ。負のエネルギーを行使する呪力にも同様に多大な効果を発揮する。
あの式神も呪力で顕現しているが、呪霊ではない分 真価を発揮することはできない。押しきれなかった要因はそこだろう。
それでも、術式の完成度の高さには目を瞠るものがある。
『俺には関係ないがな』
そこへ、ギギギ…と音を立て、ガコンッと式神の背後の法陣が回転した。先ほど受けたはずの宿儺の斬撃の傷が癒えている。
なるほど、“これ”か。
『……どう出る?』
再び【解】を使った斬撃を放つと、式神がそれを剣で弾いた。不可視のはずの斬撃が見切られている。
さらに剣を振り抜く式神の攻撃を先ほどのように腕で受け止めようとして、宿儺の身体はビルを突き抜けながら、数メートル先まで吹き飛ばされた。窓ガラスを割り、オフィスビルの壁の瓦礫に埋もれる。
『やってくれたな!』
追いかけてきた式神が剣を突き立てようとするのを躱し、顎を蹴り上げて首に足を絡めた。そして、ピタリと額に触れる。
『お返しだ』
三度 放たれた斬撃がビルを斬り裂き、式神が落下した。さらに踏みつけるように地面へ蹴り飛ばす。
自分の読みが正しければ、立ち上がるだろう。
地面へ着地し、式神を見据える。ガコンッと法陣が回転した。