第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
『この小娘には貸しがあるからな。返してもらうまで死んでもらっては困る』
詩音が珍しい術式を持っていたから 気まぐれで願いを聞き入れてやったが……今は保険として、この娘も死なせるわけにはいかない。助けた分 働いてもらわなければ。
――ガコンッ!
ニヤリと口角を上げて答えていると、重たい音が響いた。砂塵の向こうへ目を向ければ、肉体の再生を終えた式神が立っていた。
あれほどの攻撃を受けて無傷――いや、何かしたな。
『調伏の儀をなかったことにすれば良いのだろう?』
「……できるのか?」
伏黒と詩音を庇う位置で身を低くする星也に、宿儺は『知れたことを』と笑みを深くした。
『……味見、といったところだな』
拳を握り、宿儺は低く腰を落として構える。式神の振り下ろした剣を、宿儺は呪力で強化した腕で受け止めた。地面が割れるほどの衝撃はビリビリと空気を震わせ、ゴミの顔や腕に裂傷が走る。
星也は伏黒たちの前に身体をズラし、「【防壁陣】」と書かれた呪符を行使していた。なるほど。すでに術式の刻まれた呪符なら使えるか。
剣と接した腕がチリッと焼けるような痛みを訴える。宿儺は剣を受け流すと上空へと逃れ、式神の顔面に連続で打撃を打ち込んだ。そして人差し指と中指を揃え、術式を放つ。
『――【解】』
縦横に走る斬撃が身体を斬り裂き、式神が膝を折った。