第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
――23:10
道玄坂 SHIBUYA109前
伏黒の異変を察して道玄坂のSHIBUYA109を訪れた宿儺は、近くのビルの屋上からその光景を見て興奮していた。
強大な呪力を持つ式神――少年院で伏黒が纏っていた気配と同じもの。そして、対峙するのは神ノ原 星也。それも、里桜高校で垣間見たときよりさらに力を増している。
『全く……オマエたちはつくづく見ていて飽きないな……!』
星也の力――五条 悟に匹敵しないまでも驚異的。先ほどの火山頭の呪霊よりもよほど楽しめそうだ。
まぁ……強いだけが興味の理由ではないが……。
あの式神――背部の法陣が回転するごとに星也の攻撃に対応している。
布瑠(ふる)の言(こと)とあの法陣は完全な循環と調和を意味する。推し測るにあの式神の能力は、“あらゆる事象への適応”。最強の後出しジャンケン。
やがて 星也が【領域展開】をするも、間もなく解除され、血だらけで吹き飛ばされてきた。
『ここまでのようだな。なかなか健闘した方か』
クックッと宿儺は喉を鳴らして笑みを深くする。
「ちょっと ちょっと! 何 死にかけてるんだよ‼ さっさと倒せよ‼」
一転、星也の傍で喚くゴミに眉を寄せた。煩わしそうにしながら血を流す星也の元へ、宿儺は衝撃を感じさせない動作で降り立つ。
「黙っていろと言ったは――……」
『――黙れ、痴れ者が。耳障りだ』
ゴミに睨みを利かせていると、滾る呪力の気配に振り返った。
「両面、宿儺……!」
『魅せてもらったぞ、神ノ原 星也』
手に持った呪具から呪力を刃のように伸ばし、傷と疲弊に震える切っ先を向けてくる。