第54章 残虐なるヴィルトゥオーゾ【渋谷事変】
「【布瑠部(ふるべ) 由良由良(ゆらゆら)――……】」
悪い、虎杖。「死んだら殺す」って言っておきながら、自分がこの様だ。
それに、星也と星良にも謝らなければ。
あと、詩音――ただでさえ嫌われているのに、これを知ったら憎まれるどころではないだろう。
けれど、詞織を守って戦う力はもう残っていないし、逃す方法もない。
これ以外には――……。
――【八握剣(やつかのつるぎ) 異戒神将(いかいしんしょう)『魔虚羅(まこら)』】
まるでその存在を讃えるように、狼の遠吠えが響き渡る。
存在は知っていたが、実物を見るのはもちろん初めてだ。
四肢を持った、自分より二回り以上も大きな巨体。背後に車輪のような法陣を持ち、目からは翼が生え、右手に剣が括りつけている。
誰も調伏できたことのない強力な式神――その調伏の儀式に詞織と男を巻き込み、強制的に始めた。
【魔虚羅】を倒さなければ儀式は終わらないが、倒せるなどと思っていない。
――「メグのバカ。置いて行くなんてヒドイ」
あぁ、そうだな。
もう置いて行ったりしない。
詞織の髪を横に流し、顔を近づける。