第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
――23:01
渋谷ストリーム前
「日下部~、もう建物内を調べるのはよくないか? 【帳】の外には出せなかったけど、棘と後から来たメカ丸と二級・三級の術師たちのおかげで一般人の避難はあらかた済んだし」
パンダの言葉に、日下部は「うっ」と内心で言葉を詰まらせた。
さらにつけ加えるならば、家入の遣わせた医療スタッフも動員され、一般人の怪我の治療も進んでいる。これで星良の負担もかなり減るだろう。
皆、よく頑張ってんな。
高専を裏切ったはずのメカ丸がなんでいるのかは分からないが、敵意はなさそうだったし、夜蛾の指示だって言っていたからたぶん大丈夫だろう。自分は関係ない。
「早く悟のとこ向かおうぜ。副都心線の地下五階ってどこ行けばいいんだ? 棘もメカ丸も封印はマジって言ってたし、急ごうぜ」
全く、五条 五条って……。
「世の中の人間は五条だけじゃないでしょーが!」
くわっと叫ぶように言うと、パンダが衝撃を受けたように口を開く。
「今まさにこの瞬間 渋谷の片隅で、震える命があるかも分からん。具体的には小学校低学年の女児で想像してくれ。それを見落としてみろ! 儚い未来を摘み取るのに俺たちが加担したと言っても過言ではないっちゅう話よ‼」
「そ……そうかも!」
「分かったら各建物 各階、便座の裏まで調べろ、バカヤロー」
捲くし立てるように言いながら、日下部は冷や汗を流していた。
まずいな。そろそろ言い訳も苦しくなってきた。
絶対に地下五階には行きたくない。このままダラダラと時間を潰していたい。なぜなら死にたくないから!
居場所さえ分かってしまえば、コイツは一人で地下五階に行ってしまう。それも避けたい。今の渋谷で一人になりたくないから!