第53章 恐怖を讃えるコラール【渋谷事変】
外へ投げ出された伏黒は、いつでも動けるように警戒しながら状況を整理していた。
狗巻のおかげで一般人も改造人間もはけている。
問題があるとすれば、詞織の消耗が激しいことだ。当然だろう。領域に穴を空けるため、詞織にはダイレクトに特級と領域の押し合いを任せた。
詞織の底なしの呪力の源である詩音は、目の前の男にやられて気を失っており、呪力が回復していない。
「詞織、もう少し耐えろ」
「分かってる」
深く息を吐き出した詞織が、短剣型の呪具を取り出す。伏黒も腰を低く落とし、いつでも式神を呼び出せるよう構えた。
詞織は弱くない。自分のコンディションも今の状況も分かっている。
目の前の相手に集中しろ。イメージするんだ。コイツに勝つイメージ――勝つ、イメージ……。
カシャンッと【游雲】を持ち直し、鋭い切っ先を伏黒たちに向けてきた。
「――【脱兎】!」
立ち昇る殺気に詞織が口を開こうとしたが、それを止めて伏黒は【脱兎】の群れを呼び出す――瞬間、ゾアァッと夥(おびただ)しい気配に背筋が粟立った。
「詞織、来い!」
大量に呼び出した【脱兎】で男との間に壁を作り、伏黒は詞織の腕を引っ張る。
「メグ、今の気配……!」
「あぁ。間違いなく【宿儺の指】だ! 何がどうなってんだよ、渋谷は‼」
「ユージ……」
すると、【脱兎】の壁を割ってきた。