第6章 アニマートに色づく日常【鉄骨娘/始まり】
「――いますね」
重たく立ち込めた気配を発する廃ビルに伏黒が呟くと、詞織も「うん」と続けた。
「いるね、呪霊」
「「嘘つき――ッ‼」」
虎杖と釘崎が頭を抱えて五条を非難する。
「六本木ですらねぇ!」
「地方民を弄びやがって!」
そう。ここはあくまで六本木の隣。
住所に六本木が含まれることもなく、言えることとすれば、『六本木近辺』であることだけだ。
未だ怒りの冷めやらない釘崎の一方で、虎杖はすぐに頭を切り替えたようで、五条の話を聞く体勢に入った。
「でかい霊園があってさ、廃ビルとのダブルパンチで呪いが発生したわけ」
「やっぱ、墓とかって出やすいの?」
「墓地そのものじゃない」
虎杖の質問に伏黒はすかさず答える。
「墓地イコール怖いって思う人間の心が問題なんだよ」
いつだって、呪霊や呪いを生み出すのは人間だ。
伏黒の説明に、虎杖も「なるほど」と納得する。
「学校とかも似た理由だったな」
「ちょっと待って!」
伏黒たちのやり取りに、釘崎が怪訝な表情で声を上げた。
「コイツ、そんなことも知らないの?」
呪術高専に入学しておいて、初歩中の初歩である呪いの基礎を知らない虎杖に疑問を覚えたようだ。
呪術高専に入学する以上、日常的に呪いに携わる人間であると思っていたのだろう。
「ユージは特級呪物を呑み込んで呪力を手に入れた、呪いの初心者。ほんの二〜三日前までは、呪いの存在も知らない一般人」
淡々と虎杖について説明した詞織に釘崎が固まる。
一秒、二秒、三秒とゆっくり時間を掛けて少女の言葉を噛み砕き、釘崎はようやく「はぁあッ⁉︎」と理解した。