【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第13章 親の思いと子の思い
「アリス、では行ってくるよ。良い子にしているんだよ。」
「ミスティさん達の言われる事を良く聞くのよ。」
「はい、お父様。お母様。行ってらっしゃい。」
出発の朝、海軍の迎えが来た玄関で夫妻はアリスに声を掛けた。
「スティルハートさん、では宜しく頼むよ。」
「お任せ下さい。お気をつけて。」
「ミスティさん、アリスの事ですがあの子がもし何かを望めば可能な限り応えてやって下さい。」
夫人からのお願いはレインにも聞こえていた。ミスティは昨夜と同じように答えた。
「善処します」
──
カリカリ…
静かな部屋にペンの走る音がする。ミスティは今日からアリスの傍に居る為に部屋内に控えていた。部屋にはアリスと自分の2人。会話は無くアリスは勉学に励む。
カリカリ…
ペンの音が止んだ。ミスティが時計を見るとお茶の時間になっていた。
『アリス様、お茶にしますか?』
アリスに声を掛けると、はい、と返事があった。
世話人が用意したお茶とお菓子も基本、ミスティが確認をする。その為、カップに注いだり皿に切り分けたりするのはミスティの役目だった。
『美味しそうなケーキですね。お母様の手作りだそうです。』
娘に寂しい思いをさせるせめてもの償いとして夫人が準備したものだった。ミスティは努めて明るく言ったがアリスは無言で口に運んで行く。
「ご馳走様でした。」
アリスはそう言うとピアノの練習の為に部屋を出ようとする。片付けを世話人に任せミスティが先導する形で部屋を出た。
──
🎼.•*¨*•.¸¸♬🎶 ♪♩♬
ミスティは思った。アリスの音は寂しい。自分も貴族の令嬢として育てられた為、ピアノについては分かる方だ。
音楽は奏者の気持ちがよく表れる分野だ。同じように演奏しても違うように聞こえるのは奏者の気持ちが日々違うからだ。
アリスは何か悩んでいるのだろうか。先日からのアリスの様子を思い出しながらミスティはピアノの音に耳を傾けた。
──
夕食をとり入浴を済ませ世話人に髪を乾かして貰っているアリスを少し離れて見ていた。アリスに兄弟は居らず周りは大人ばかり。子供らしい事をする相手も居ない。
(私と一緒なのかもしれない)
ミスティはベッドに横になり眠ったアリスのあどけない寝顔を眺め思った。