【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第52章 スタートライン
───ニューマリンフォード
予定より早く此処へ着いた。1ヶ月前に来た時は感じなかったいつも自分が心の何処かで求めていた気配がしたような気がして、見聞色の覇気を使う事もなく気配のする方へ自然と足が向いた。だが、辿り着いた先には何も無かった。
「…気のせいか。」
主の居ない部屋で待つのは気が引け廊下で待つ事にした。近くの窓から見えるのは先程まで居た海。今日は穏やかだった。
(アイツもよく海見てたな…)
記憶の中の住人を思い浮かべた。長い髪を靡かせ静かに海を見つめる姿は凛として綺麗だった。何も出来なかった虚しさからくる自分への静かな怒りに自然と拳に力が入った。
「レイン?」
声がした。
「おや?来るのは明日じゃなかったのかい?」
「おつるさん…天候に恵まれ、先程。」
「そうかい。丁度良かった。例の件と併せて相談したい事が出来てね。まぁお入り。」
「はい。」
───
『はい。パンクハザード迄のエターナルログポース』
「これか…助かった。」
ローは手の中の方位磁針を眺めながら、ミスティから併せて受け取った資料をパラパラと捲った。
『ロー…あとこれ…』
「あぁ?まだあるのか?」
ローは見ていた資料から顔を上げるとミスティが差し出していたモノに驚きを隠せなかった。
「悪魔の実…何でお前が?」
『侵入した時に見つけて…どうしようか迷ったんだけど…』
ローは実を手に取りじっと見つめた。
『勝手な事してごめんなさい…でもペンギンとかに食べて貰えたらハートの海賊団の役に立つと思って…』
ミスティがそう言うとローは手にしていた実をミスティに返して言った。
「お前が食え。」
『えっ…?』
「お前が見つけたんだ。お前が食えば良い。寧ろ食わない理由があるか?」
『でもっ…』
「能力は何かは分からねぇが、お前もこの世界で生きて行くんなら食ってみる価値はあると思うが。」
ローは悩んでいるミスティに続けて言った。
「お前は強い。だが、新世界はドフラミンゴみてぇな奴がゴロゴロ居る。その実の能力で新しいお前になれ。今より必ず強くなる。」
ミスティは素直に強くなりたいと思った。この実の力を借りて強くなって皆の、ローの力になれるのなら…
───この日、美しき諜報部員は能力者として新しいスタートを切った