【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第49章 王下七武海への道
──海軍本部ニューマリンフォード
「やぁ、レイン。よく来たね。」
「はい。おつるさんもお元気そうで何よりです。」
「やめな、人を年寄り扱いするんじゃないよ。」
つるは久し振りに見るレインに目を細めた。一時は大切な人を失いどうなることかと思ったが、目の前のレインはそれを感じさせない程、回復したようだ。と言うより以前とは違う強さを感じ、男としての成長を感じた。
「クザンさんの事は…残念です。」
「あぁ、そうだね。」
頂上戦争後、元帥の椅子を賭け激闘の末にサカズキに敗れたクザンは海軍を去った。だらけきった正義を掲げ物事をサカズキとは違った角度から見るクザンのような男は海軍には必要だったが、つるは止めることが出来なかった。
「レイン、お前は奴に誘われたんじゃないのかい?」
「はい。ですが断りました。今の立場でしか出来ない事がありますし俺自身がケリをつけなければならない事があるので。」
「…そうかい。」
優秀なレインがクザンと一緒に行けば政府は貴重な"人財"を失う事になる。頭のイカれた政府上層部に鶴はもはや期待はしていない。次世代を引っ張るレインのような若い役人が必要なのだ。
「レイン…能力者になりたいかい?」
「っ!?」
「お前は十分に強い。そしてその強さに見合う精神を持っている。悪魔の実の化物じみた力に依存すること無くその力を正しく使えると私は思っている。」
「……。」
「とあるルートから悪魔の実の中でも希少と言われる実を入手したと連絡があった。1ヶ月後には私の手元に届く算段だ。どうだい?」
「…俺は自分の弱さに嫌気がさしました。頂上戦争であの男と殺り合った時、今の自分では倒せないと思った。そしてもっと強くならねば大切なものは守れないと…」
鶴はレインの辛そうな顔を見て確信した。
「1ヶ月後にまたおいで。」
「…有難うございます。」
──
鶴と別れたレインはニューマリンフォードの港に来ていた。波の音が心地よくレインの心を穏やかなものにさせた。
──レイン
かつて同じような状況で隣で笑っていた女は居ない。抱き締めてキスを交わすことももうない。
「もう少しだ。あと少し…お前が最期に信じた俺の正義を全うするときだ。」
──待ってろ。ミスティ。
レインの愛する女への誓いの言葉を優しく波の音が包んだ。