【ONE PIECE】私の居場所~アナタの隣に居たかった
第33章 あの日に戻れるなら
ふと机の上に置かれた物に目が止まった。
「何で此処に…」
それは革命軍の兵士にとって任務に就く時は必ず持って行くもの。いや、持って行かねばならない。此処に帰ってくる為に。
バルティゴの入江で任務に発つセレナを見送ったあの日、アイツはこれを置いていった。不思議なくらい饒舌で俺の任務や記憶の事を気遣っていたが此処に戻るつもりがなかったからなのか?
俺はそれを掴み太陽の光に翳した。砂時計のような格好のそれは真ん中に磁力を帯びた指針がある。俺は台座の裏面を見た。
──Serena
俺達革命軍の主要兵士が必ず持っているエターナルポース。土地の場所を本来表記するが革命軍の総本部であるバルティゴの存在が世に知られる事を避ける為、皆名前を彫っている。
バルティゴへ帰る為にはこれが必要だ。ビブルカードでも代用出来るが常に此処に居る兵士は限られる為、諜報活動で此処を離れる機会が頻繁なセレナにはエターナルポースが必要だ。
──私は…元気だよ。サボは?
──私なら大丈夫!
あの時どんな気持ちで俺に言った?任務中に偶然会ったあの日、アイツは泣いていた。世界政府に潜入して2年位は経っていた。CPとしての任務で瀕死になりながらも革命軍の為に1人で頑張っていた。そんなアイツに俺は安易に戻って来いやらどうして任務の内容が俺に言えないのか等と今思えばなんて事言っちまったんだと思える内容ばかり。
「セレナ…」
机上にはもう1つ。埃を被り伏せられていた紙のような物。其れを捲った俺の時間が一瞬止まった。
「セレナと…俺?」
紙のような物は写真だった。驚く事にそこに写っている者達…子供の頃の俺とセレナだ。服装や景色、火傷の無い顔からバルティゴではない。いつだ?俺とセレナは知り合いだったのか?
──仲間…私はサボにとって仲間なの?
── サボは私の何を知ってるの?
── そんな関係なら要らない。私には邪魔でしかない。
いつも俺を冷めたような何処と無く悲しそうに見ていたセレナから初めて発せられた感情を含んだ言葉。
「セレナ…お前、俺の何なんだ?俺の失くした記憶にお前は居たのか?」
亡くしてから気付く事実が多すぎて処理速度が限界で俺の思考はストップした。
「取り敢えず時を戻してぇよ…セレナ」
写真の中で無邪気に笑う子供の2人にポタポタと熱い水の玉が降り注いだ。
