• テキストサイズ

十六夜の月【アイナナ短編集】

第3章 三夜目.トライアングラー




—12小節目—
救われた日


「おや。エリちゃん、いらっさい」

『お邪魔してます、大和さん!』


大和が寮へと帰ると、エリと三月が並んで台所に立っていた。どうやら、これから何か一緒に作るらしい。


『あ!毎回同じ物で申し訳ないんですけど、お土産ありますよ』

「お土産?」

『はい!』

「おにぎり?」

『はい!』

「俵の?」

『はい!』


こんな笑顔で、こんなにも良い返事をされては、ありがとうと言う他ない。


「そっかぁ…。今日の中身は何かなぁ」

『ヨーグルトの佃煮です!』

「うーん。煮ちゃいかんでしょー、ヨーグルトは」


この分では、これから作ろうとしている物もきっとアブノーマルなのだろう。いや、三月との共作ということを鑑みれば、いつもよりは期待を持って良いはずだ。
大和は、恐る恐る訊いてみることにする。


「それで…今日はこれから、なに作んの?」

「『フォアグラ』」

「……さいですかー」


大和はもう、突っ込むことをやめた。


「エリ。エプロン、オレンジと青どっちがいい?」

『うーん、じゃあオレンジ!』

「こっちを選ぶとはお目が高い!さすがだな」

『へへー』


三月は、自分が普段使っているエプロンをエリに被せた。そして丁寧に蝶々結びを作っているところで、ニヤニヤ大和に突っ込まれる。


「おやぁ?お二人さん、なーんか雰囲気変わりました?もしかして…、あれぇ?ついに……」


二人の顔が、同時にボンと赤くなる。


「ははっ。初々しい反応ご馳走様。じゃ、邪魔者は退散しますか。エリちゃん、どーぞごゆっくり」

/ 249ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp