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【呪術廻戦】致死量の呪縛

第3章 飛んで火に入る夏の虫


おかしな話だ。小学生の頃から体育の授業で恥をかくような成績で馬鹿にされて来たというのに。人より身体能力が少なからず劣っている筈の美代が、まさか自身より高い塀を軽々と飛び越えるだなんて誰が想像していたことか。

「えっ、私なんで?!」

降りた先は民家の敷地内だった。一般家庭にしては少しばかり広々と感じさせられる庭の中でも、最も木々の茂る影に落ちて、美代は戸惑いに思わず声を上げる。すると、宿儺に「喚くな」と低い声で命じられ、抑制させられた。

「息を止めろ」

「う、うん」

この場に潜り隠れたことを気づかれない様にする為であると察した美代は、自身の口を手で塞いだ。そして、静閑なる時が流れ行くのをただただ待っている。

しかし、いつまで経ってもその気配が消えることはなかった。まるで、美代がここにいるのが分かっているかのように、足音が近づいては消え、またしても近づいて来る。ある程度の場所を把握されているようだった。それこそ、見つかるのは時間の問題だと悟り、芝生に座り込んでいた重たい体をゆっくりと持ち上げる。

「いてっ……」

美代が地に足を付けると同時に、ズキズキとした激痛が足首を襲った。どうやら着地した時に足を挫いてしまったようで、地を進むことは許して貰えず、足を一歩前に出す度激痛が襲いかかる。

「本当に脆いな、お前は。それでは歩くことも出来んだろう」

「うう、ごめん」

「これは確信では無いが、奴の狙いは俺だ。つまり俺を差し出せば、お前が追われる必要は無くなる」

「え……?どういうこと?」

唐突に吐かれた予想外の言葉に、美代は宿儺にその意を聞き返すことしか出来なかった。
だって、どうして彼が宿儺の存在を知っているのだろうか。宿儺を知っているのは美代だけであった筈だというのに。

「歩けんと言うなら、仕方ない」

「宿儺……?」

「奴を殺せば良い」

「……そ、そんな、私が、出来るわけないよ!!」

人殺しになれと言うのだろうか。それでは、本当に悪魔だ。今後一生償っても、許されることの無い罪を抱えて生きて行くことになる。そんなことをしろと、宿儺は本気で言っているのだろうか。
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