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【呪術廻戦】致死量の呪縛

第3章 飛んで火に入る夏の虫




 ぽつ、ぽつ、と不規則な音が鳴り響いている。

辺りの景色が見えないということを、以前宿儺が言っていたのをふと思い出す。気配は感じることが出来るようだが、美代の姿形は分からないとのことだった。
闇が広がっている。無の空間に、果てしない闇が。それは到底想像出来はしなかったが、確かに悚然とする様な世界だった。自身で体験して初めて、美代は恐怖でありながら、畏怖の世界を知ることになる。無でありながら襲い来る闇の世界。何も無いのだ。微かに聞こえるのは、やはり水が滴る音だけである。
自身の足は何かに取り憑かれたように重く、上手く持ち上げることさえ許されなかった。底から足を引っ張られている様にも感じる。それが、あまりに恐ろしい。恐怖に心を蝕まれるのを感じていた。喉が凍りついてしまったのか、声を通すことを拒絶する程に。助けを呼ぶ声さえも上げられずに、美代はただ一人で闇の世界を彷徨し続けている。

ぽつり。またしても一粒の水滴が頬に伝い落ちていった。



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