Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第8章 帰還■
「さすがですねルーナさん。きちんと止血できていたので治りも早いでしょう。それに傷はそこまで深くない。しかし、しばらくはあまり動かさないでくださいね。」
ジャケットの上からだったお陰もあるだろう。
それから…
医者は消毒液を染み込ませたガーゼをルーナの左肩に当てた。
チクチクとした痛みが全身に広がる。
負傷した多くの兵士が寝ている医務室を顔を歪ませながらグルリと眺める。
せっかくエルヴィンが考案した長距離索敵陣形であったのに、運悪く最悪の天候に見舞われてしまったため、今回も多くの負傷者を出してしまった。
あの二人も...
二人の髪を入れた胸ポケットに手を当てる。
医者に礼を言い、エルヴィンの執務室へ向かった。
ノックをしてからエルヴィンの部屋に入るとエルヴィンは眉を下げ、
「ルーナ!傷の具合は?!」
と言いながらガタンと椅子から立ち上がった。
ルーナはそれを手で制止した。
「いいよ、座ってて。エルヴィンも手の傷は重症でしょ。私は全然大丈夫。痛みも引いたし傷自体は浅いって。」
「...そうか...また君に助けられたな...すまなかった」
エルヴィンは、野犬に襲われた時にルーナが前に立ちはだかって腕を噛まれ続けていた幼い頃の光景を思い出した。
やはり全くあの頃と変わってないな...
ルーナは後先考える間もなくすぐに行動に走る...
そうして気がついた時にはいつも自分が守られている...
眉を下げたまま視線だけ下に移したエルヴィンにルーナは言う。
「どうして私の傷が浅かったんだと思う?きっと...リヴァイはあなたを殺すことを躊躇っていたんだと思う。彼が本気だったらひとたまりもなかったはず...」
「しかしあの時あのまま君と私共々串刺しにされていたらどうするつもりだったんだ。私は正直肝を冷やしたぞ...」
「そうならない自信があったの。なぜかは...分からないけど...でも彼は...リヴァイは...調査兵団に力を貸してくれるって、そう思ったの...」
しばしの沈黙が流れたあとにエルヴィンは口を開いた。
「彼の様子を見てきてくれ。」
「...うん、そのつもり」