Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第38章 溺れて沈む
医者を呼んで治療を施されたクラムは、なんとか一命をとりとめたらしい。
回復までには相当な時間がかかるから、きちんとした病院へと明日運ばれることとなった。
そして当然、兵士としてやっていけない身なので退団せざるを得ないだろう。
朝まで寝ずにクラムについていると言って聞かないカイルをそのままに、リヴァイとエルヴィン、そしてハンジは団長室で話していた。
こうなる経緯をリヴァイから聞いた2人は当然苦い顔をする。
「てめぇら…まさか俺が刺したとか思ってねぇだろうな?」
「ややや、思ってないよ!!」
ハンジは慌てて言った。
「しかしな、リヴァイ…人を脅すにしてもだな、無闇矢鱈にナイフを取り出すべきじゃない。過ぎたことをどうこう言うつもりはないが、結果そのナイフでこういうことになったのも事実なんだ。」
エルヴィンの咎めるような言い方に、リヴァイは舌打ちをする。
「ならエルヴィン、てめぇだったらどうした?お前の大切なルーナにあんなことをした奴に、まさかいつものその紳士面で救いの手でも差し伸べたか?」
エルヴィンは溜息を吐いた。
そして考える。
自分だったらどうしただろう…
その場にいたら…
まずは蹴りの一発くらいは入れてしまうかもしれない…
もしかしたら理性が効かずに、必要以上に痛めつけてしまうかもしれない…
リヴァイがよく自分を罵る時に使う"紳士面"という言葉。
これは単なる自分の仮面である。
そう考えると、むしろリヴァイがクラムに対してとった行動に驚きを隠せなくなる。
「リヴァイ、なにはともあれあの兵士を救ってくれたのはお前でもある。ルーナのこととなると理性や感情を抑制できないお前が、よく我慢できたな。言い方は悪いが、正直不思議でならない。」
リヴァイは不機嫌そうにエルヴィンを睨む。
「殺そうとしたさ。俺は間違いなく…あの時…」
その時にカイルに止めに入られたわけだが、それに正直あの時安堵した。
クラムにナイフを振りかざしたときも実際少しばかりの理性が残っていて、誰か止めてくれと思っていた。
そうじゃないとクラムだけでなくきっとルーナや自分をも傷つけてしまうと。
そしてそれにはもちろんやり直しは効かない。