Lunatic Fortuna…進撃の巨人リヴァイ溺愛
第37章 エゴイスト■
言葉を失い茫然としたまま床に崩れ落ちるカイルをそのままに、
血を大量に流して気を失っているクラムの元へリヴァイがしゃがみこむ。
「チッ、バカが」
リヴァイがナイフを抜き取り、クラムを仰向けにする。
そして自分のジャケットを脱ぐと、開いた傷口に押し当てた。
みるみるとそれは血で染っていき、リヴァイの両手も瞬く間に血で染る。
「おいカイル!いつまでボーッとしてるつもりだ!てめぇは早く人手を呼べ!」
床に手をついて力なく茫然としているカイルに一喝すると、カイルは我に返ったように顔を上げた。
「へいちょ…でも…」
「多分助かる。腹刺しただけで死にはしねぇよ。こいつが馬鹿で良かったな。」
リヴァイはジャケットでクラムの上半身を巻くように強く袖を縛った。
「だがこのままじゃ出血多量でそれも危うくなるだろう。だからお前は今すぐこのことを知らせに行け。ここは幹部棟だから1番近いのはハンジだ。急げ!てめぇの大切な友人だろう!」
カイルは顔を強ばらせたまま急いで立ち上がると、走って部屋を出ていった。
「リヴァイ…」
静かになった部屋で、ようやくさっきからルーナが何を呟いていたのか理解する。
「リヴァイ…」
リヴァイは眉をひそめてルーナの方を見る。
ルーナの目は完全に閉じていて、意識が途切れているのか、それとも夢の中なのか、全くわからない。
「リヴァイ…」
今すぐに抱き締めたいが、それどころではない。
目の前にいるクラムと血で染った自分の手を見つめる。
俺はなぜこいつを助けようとしているのだろう
元々自分が殺そうとしていたし
別に死んでもいいじゃねぇか
そんな思いが脳裏を掠めた。
けれど結局それができなかったのは、「情」なのだろう。
だとすると、やはり自分は大概エゴイストだと思った。
「リヴァイ…」
「ルーナ…待っててくれ。まだお前の相手はできねぇ」
血液で染った自分の掌をグッと握りしめた。